システムの構成部品
水素関係部位について
燃料電池車には、水素タンク(70MPa)・FCスタック・水素配管などの水素関係部位があります。水素関係部位などには、取り扱い上の注意を記載したラベルが貼付してあります。
イラストは説明のための例であり、実際とは異なります。
- ラベル
- FCスタック(燃料電池・水素ポンプ)
- 水素ディテクタ(検知器)
- 水素タンク
- 水素タンクバルブ
- 水素配管
- 水素供給ユニット
高電圧部位・高電圧配線・高温部位について
燃料電池車には、FCスタック・駆動用電池・パワーコントロールユニット・FC昇圧コンバータ・オレンジ色の高圧ケーブル・電気モーターなどの高電圧部位(最高約650V)や、冷却用ラジエーターなどの高温部位があります。高電圧部位などには、取り扱い上の注意を記載したラベルが貼付してあります。
イラストは説明のための例であり、実際とは異なります。
- ラベル
- 外部給電アウトレット
- 水加熱ヒータ-
- FC昇圧コンバータ・補機インバータ
- パワーコントロールユニット
- 駆動用電池
- サービスプラグ
- 電気モーター(駆動モーター)
- 高電圧ケーブル(オレンジ色)
- FCスタック(燃料電池・水素ポンプ)
- エアコンプレッサ
- エアコンコンプレッサー
- FCスタック冷却用ラジエーター
- インバーター冷却用ラジエーター
- FCウォーターポンプ
知識
- マルチインフォメーションディスプレイに“水素漏れ検知 販売店で点検”が表示されたときは
少量の水素ガスもれのおそれがあります。ただちにトヨタ販売店で点検を受けてください。
- マルチインフォメーションディスプレイに“水素漏れによりシステム停止 安全な場所に停車して取扱書を確認”が表示されたときは
水素ガスもれのおそれがあります。
水素ガスもれやその他の異常に気付いたとき:→水素ガスもれやその他の異常に気付いたとき
エアコンが自動的に停止します。
- 燃料切れになったとき
燃料切れでFCシステムが始動できないときは、燃料残量警告灯(→燃料残量警告灯)が消灯するまで充てんしてから再始動してください。少量の充てんでは始動できない場合があります。
- FCスタックについて
使用環境により、出力は低下しますが走行への影響はほとんどありません。
次のような状況では、通常使用時と比べて早めに出力が低下する場合があります。
高濃度粉じんの場所で使い続ける
火山、温泉地などの高い硫黄濃度の場所で使い続ける
高い濃度のシンナー・塗料などの有機溶剤・アンモニア臭などのアミン系物質・塩素系物質(潮風・融雪剤など)が存在する場所で使い続ける
エアクリーナフィルター内に海水が浸入したとき
エアクリーナフィルターの交換および周辺の清掃をおすすめします。トヨタ販売店で点検を受けてくださいFCシステムの始動停止回数が過度に多い場合
氷点下での使用期間が過度に多い場合
ISO-14687に準拠しない、不純物が多い水素ガスを充てんした場合
- 水素タンクについて
水素タンクは、車両の燃料である圧縮水素ガスを水素ステーションで高圧充てんしてためておく容器です。
燃料電池車は定期的な燃料装置の点検の他に、定期的な容器(水素タンク)の再検査が法律で義務づけられています。
容器再検査に合格し、検査有効期限内でないと圧縮水素ガスを充てんすることができません。詳しくはトヨタ販売店にご相談ください。水素タンクは法律により充てん可能期限が定められています。燃料充てん扉の裏側・ボンネットの裏側に明記される充てん可能期限を過ぎる場合は、水素タンクを交換する必要があります。
水素タンクまたは水素タンクバルブを廃棄するときは、法律に従い処分する必要があります。詳しくはトヨタ販売店にご相談ください。
高圧ガス・水素タンクの喪失・盗難時の順守事項
燃料電池車が盗難された場合、管轄の警察官へ被害届を必ず提出をしてください。
その際に、盗難された車両が高圧ガスを充てんするための容器を搭載していることを、警察官に必ず伝えてください。
- FCスタック用冷却水について
高電圧であるFCスタックを安全に冷却するために、FCスタック用冷却水は絶縁性の高い専用品を使用しています。
FCスタック用冷却水の補充・交換は、トヨタ販売店にご相談ください。
- イオンフィルタについて
FCスタック用冷却水の絶縁性を常に維持するために、FCスタック用冷却水の経路にはイオンフィルタが設置されています。
イオンフィルタは定期的な交換が必要となります。(→“イオンフィルタ交換時期販売店で交換”が表示されたときは)
- 排気排水管について
走行後、パワースイッチをOFFにしてFCシステムを停止(→FCシステムを停止するには)したときに排気排水管から排水されます。車両後方に立つと水がかかることがありますので注意してください。
車庫や立体駐車場で排水量を少なくしたい場合は、駐車する前にスイッチ操作で排水することが可能です。(→ウォーターリリース(H2Oスイッチ))
寒冷時に排気排水管から排出される白霧は水蒸気ですので異常ではありません。風向きなどによっては、車両側面から白霧が出ることがあります。気になる場合は、トヨタ販売店にご相談ください。
排気排水管が異物でふさがれるとFCシステムが停止することがあります。
寒冷時、以下の状況では白霧が排出されることがあります。システム保護のための水蒸気排出であり、異常ではありません。
燃料充てん後など、フューエルリッドを開けてから数十分経過した場合
パワースイッチをOFFにしてから数時間経過した場合
- 水素ディテクタ(検知器)について
パワースイッチをONにすると、水素ガスもれの検知を開始します。
- 出力制限について
出力が制限されたときは、電気モーターに供給される電力が制限されるため、アクセルペダルを踏んでも車速があがらなかったり、減速することがあります。安全な走行速度が維持できない場合は、走行車線から離れた安全な場所に停車してください。
急加速・急減速のくり返し、上り坂での連続走行、高地での高負荷連続走行などによって冷却水の温度が高くなったときは、マルチインフォメーションディスプレイに“FCシステム高温 出力制限中です”が表示され、出力が制限されることがあります。冷却水が正常な温度にもどれば出力制限は解除されます。(→“FCシステム高温出力制限中”または“高負荷継続のため出力制限中”が表示されたときは)
燃料残量警告灯が点灯したあとに、しばらく走行していると走行可能な距離を伸ばすため出力が制限されることがあります。この状態になると残りわずかしか走行できません。すぐに圧縮水素ガスを充てんしてください。
寒冷時は、通常よりも早く燃料残量警告灯が点灯し、出力が制限されることがあります。
- 電磁波について
高電圧部位や高電圧配線は、電磁シールド構造になっています。従来の車や家電製品と比べて、電磁波が多いということはありません。
アマチュア無線の一部(遠距離通信)において、受信時に雑音が混入する場合がありますので、あらかじめご了承ください。
- 駆動用電池について
駆動用電池には寿命があります。寿命は車の使い方、走行条件により異なります。
- 極寒の環境での始動について
外気温の影響により駆動用電池の温度が著しく低くなっている場合(およそ-30℃以下)、FCシステムが始動できなくなることがあります。その場合は気温の上昇を待つなど、駆動用電池の温度が上がってから再度始動操作をしてください。
- 適合宣言(駆動用電池)
この車両は、ECE100(バッテリー電気車両安全)に基づいた水素排出量に適合しています。
- 水素ガスの特性
水素ガスはガソリンにくらべて着火しやすいですが、空気にくらべて軽く拡散しやすいので、外部にもれた場合でもすぐに燃焼可能な濃度より薄くなる特徴があります。
水素ガスは下記に示す特性を理解した上で正しく使用すれば、ガソリンや天然ガスなどと同様に危険な燃料ではありません。
水素ガス
LPG(液化石油ガス)
ガソリン
空気中での状態
気体(空気より軽い)
気体(空気より重い)
液体。揮発後は気体(空気より重い)
着火しやすさ
ガソリンにくらべて着火しやすい
ガソリンと同程度
-
たまりやすさ
上方に拡散し、開放空間ではすぐに安全な濃度に薄まる
衣服などに付着しない
地面、床に広がる
衣服などに付着しない
地面、床に広がる
衣服などに付着する
発見しやすさ
無色・無臭の気体のため、色や臭いでの発見は難しい
ガスがもれる音やマルチインフォメーションディスプレイのメッセージで判別可能
臭い・ガスがもれる音で判別可能
色・臭いで判別可能
- 水素安全の基本的な考え方
もらさない
水素配管の接続部分はもれにくさに十分配慮した設計をしています。車検時には水素配管の接続部分のもれの確認をします。
検知して止める
水素ディテクタ(検知器)を装着しています。万が一水素ガスがもれた場合は、水素ガスを検知して水素タンクバルブが閉じて、水素ガスのもれが止まります。
衝突センサーを装備しています。衝突を検知したときは、水素タンクバルブが閉じ、水素ガスの大量もれを防止します。
もれた水素をためない
水素タンクや水素配管などは車室外に配置し、水素ガスがもれた場合も空気に拡散する設計をしています。
火種を置かない
水素配管の付近には火種になるものを配置しない設計をしています。
警告
- 水素関係部位について
改造・架装・分解は絶対にしないでください。
床下の水素タンクやFCユニットルーム内のFCスタックおよびこれらを結ぶ部品や水素配管などには水素ガスが充てんされています。これらの部品の取りはずし・分解などを行うと、水素ガスもれの原因になり、車両火災や爆発につながり、最悪の場合死亡につながるおそれがあり危険ですので、絶対にさわらないでください。
- 水素ガスもれやその他の異常に気付いたとき
大量の水素ガスもれに気付いたときは、パワースイッチをOFFにしていったん車両から離れてください。
水素ガスがもれているときや、異常な箇所が発見できないときなどは、火気を近づけないように、付近の人に救援を求めて監視人をつけるか、火気厳禁を表示して、ただちにトヨタ販売店へ連絡してください。
水素ガスがもれる音や、その他の異常に気付いたときは、ただちに安全で風通しのよい場所に停車し、車両から離れてください。
マルチインフォメーションディスプレイにメッセージが表示されたときは、ただちに安全で風通しのよい場所に停車してください。
発炎筒は車両の近くで使用しないでください。車両の近くで使用すると、もれた水素ガスに引火して車両火災になるおそれがあり危険です。(→発炎筒)
- 排気排水管について
排気排水管から出てくる水や水蒸気を直接さわらないでください。低温やけどをする可能性があります。
排気排水管から生成水が排出されますが、飲料水としての処理はしていませんので、飲まないでください。
新車納車後の一定期間や長期放置後などは、まれに排気排水管から臭いが感じられる場合がありますが、異常ではありません。また、臭いは有害ではありませんが、気分を害するおそれがあるため嗅がないでください。
- 高電圧・高温について
この車は、高電圧システムを使用しています。
次のことをお守りいただかないと、やけどや感電など重大な傷害におよぶか、最悪の場合死亡につながるおそれがあります。
高電圧部位・高電圧配線(オレンジ色)およびそのコネクターの取りはずし・分解などは絶対に行わないでください。
走行後はFCユニットルーム内の部品が高温になります。車に貼ってあるラベルの指示に従い、常に高電圧・高温部位に注意してください。
駆動用電池にはサービスプラグが設置してあります。サービスプラグは絶対にさわらないでください。サービスプラグは、トヨタ販売店での車両の修理時などに、駆動用電池の高電圧を遮断するためのものです。
- 事故が発生したとき
次のことをお守りいただかないと、車両火災や感電事故などが発生し、重大な傷害におよぶか、最悪の場合死亡につながるおそれがあります。
続発事故防止のため安全な場所に停車して、パーキングブレーキをかけ、シフトポジションをPにする
水素ガスもれがないか確認する
水素ガスもれの有無は、水素ガスのもれる音がする・マルチインフォメーションディスプレイにメッセージが表示されるなどの症状で確認できます。
大量の水素ガスもれに気付いたときは、パワースイッチをOFFにしていったん車両から離れる
水素ガスがもれているときや、異常な箇所が発見できないときなどは、火気を近づけないように、付近の人に救援を求めて監視人をつけるか、火気厳禁を表示して、ただちにトヨタ販売店へ連絡してください。
発炎筒は車両の近くで使用しない
車両の近くで使用すると、もれた水素ガスに引火して車両火災になるおそれがあり危険です。(→発炎筒)
高電圧部位・高電圧配線(オレンジ色)などには、絶対にさわらない(→高電圧部位・高電圧配線・高温部位について)
車室内および車室外にはみ出している電気配線には絶対にさわらない
液体の付着やもれがある場合は絶対にさわらない
駆動用電池の電解液(炭酸エステルを主とする有機電解液)が目や皮膚にふれると失明や皮膚傷害のおそれがあり危険です。万一、目や皮膚に付着した場合はただちに多量の水で洗い流し、早急に医師の診察を受けてください。
車両火災のときには、水素タンクの破損を軽減するために、水素タンク内の水素ガスが水素タンクバルブから車両右側と車両後方のななめ下に放出されます。車両から離れて、車両の右側や後方に立たないようにしてください。
万一、車両火災が発生したときは、ABC消火器を使用して消火できます
水をかける場合は、消火栓などから大量にかけてください。
後輪が接地した状態でけん引しない
電気モーターから発電され、破損の状態によっては、火災のおそれがあり危険です。(→けん引について)
- 駆動用電池について
絶対に転売・譲渡・改造などをしないでください。廃車から取りはずされた駆動用電池は事故防止のため、トヨタ販売店を通じて回収を行っていますので、ご協力ください。
適切に回収されないと、次のようなことがおこり、重大な傷害におよぶか、最悪の場合死亡につながるおそれがあります。
不法投棄または放置され、環境汚染となるばかりか、第三者が高電圧部位にふれてしまい、感電事故が発生する
装備された車両以外で駆動用電池を使用(改造などを含む)し、感電事故、発熱・発煙・発火・爆発事故、電解液漏出事故などが発生する
特に、転売・譲渡などを行うと、相手にこれらの危険性が認識されず、事故につながるおそれがあります。
駆動用電池を取りはずさないままでお車を廃棄された場合、高電圧部品・ケーブル・それらのコネクターにふれると、深刻な感電の危険があります。お車を廃棄するときには、トヨタ販売店で駆動用電池を廃棄してください。駆動用電池は適切に廃棄しないと、感電を引き起こし、重大な傷害におよぶか、最悪の場合死亡につながるおそれがあります。
注意
- 駆動用電池について
駆動用電池周辺に多量の水をこぼさないよう注意してください。
誤ってこぼしてしまったときは、トヨタ販売店で点検を受けてください。
- FCスタック用冷却水について
水や他の種類の冷却水は故障の原因になりますので、絶対に入れないでください。